北野共生プロジェクト研究所
「北野共生システムプロジェクト研究所」というのは、北野宏明さんの主宰する、コンピュータ・サイエンスの研究所である。その研究スペースが一体どうなるのか、どんな空間が要請されているのか。コンピュータそのものよりも、たぶんそこでの研究員相互のコミニュケーションを、どうつくるか、そっちの方が空間にとっては重要課題である。たまたま、ある人からガラスをホワイトボードの代わりに使っている例があるという話を聞いた。早速見に行ったら「無反射ガラス」というタペストリー・ガラスよりももっと肌理の細かいガラスだということがわかった。確かに使える。それに、ガラスなんだから、半透明のシートを間に挟めば、そのまま映写スクリーン使える。全部これでやろう。壁もテーブルもパーティションも。
というわけで、この研究所はすべてがスクリーンである。「この空間をうまく稼働させること自体がこの研究所の研究テーマでもあるんです」というのは北野さんのこの空間に対する非常に心強い意見である。実際、北野さんは施主である以上に、この設計のもっとも重要なパートナーであった。
ガラススクリーンのテーブルは新しい発見だった。そこに映される映像が鉛直の壁に映される映像とは、まったく違うのである。その映像を囲んで話ができる。大げさにいえば、映像とそれを操作し、受け取る人間との間のまったく新しい関係を見たように思った。
(新建築2000.01より抜粋)