平田みんなの家
「平田みんなの家」は釜石市の平田(へいた)グランドに並ぶ仮設住宅群の中にある。平田第六地区という場所である。ここに建てられた仮設住宅は従来の北側アクセス南側採光の住棟配置ではなくて、住戸へのアクセスがお互いに向かい合うように配置されている。つまり通りを挟んで玄関が向かい合って配置されているわけである。3・11直後に岩手県の住宅課長にこの配置計画を提案して実現した。240戸の住宅群である。
「みんなの家」はこの仮設住宅群の中につくった。夜は飲み屋になるような「みんなの家」である。近くの国道からも、住宅群の中からもどこからでもよく見える建築である。夜は特に目立つ。眠れない時にもここに来れば誰かに会える、話ができる、そう思ってもらえるような建築になったらと思った。夜、中の光が透けて見えるようなテントを素材として選んだのはそのためである。
昼間は外の光が透過して中は明るい。傘のような構造システムである。芯柱の125角の角パイプにフードをつけて真下に囲炉裏をつくった。芯柱に穴を空けてそれを煙道にする。早速住人差し入れの鹿肉やスルメを焼いた。ボランティアの学生、仮設住宅の住人たち、工事を請け負ってくれた工事会社の職人たち、完成直前の即興飲み会である。囲炉裏を囲むだけで誰とでも話ができそうな気がする。
囲炉裏を囲みながら住民の人たちと話をした。向かい合ったそれぞれの通りに通り名をつけたらどうだろう。花の名前がいいという多くの人たちからの意見で、12の通りに、それぞれ12種類の花の名前つけられた。