STUDIO STEPS
もともとのオーナーの石井夫妻はともには学生時代からの友人で、それぞれ彫刻家と絵描きのご夫妻である。主にアトリエとして使う。時には人を呼んでコンサートをしたい。大学紛争の時からのつきあい(同志?)でもあった。申し合わせたわけではないが、住宅であると同時に誰か外側の人に対しても役に立つような施設をつくりたいと思っていた。できるだけ外に対して開放的な大空間をつくって、そこをアトリエのような場所にする。あるいは小さなコンサートができるような場所にする。日常の居住部分はその大空間の下にもぐり込んで外からは見えない。住宅という建築は必ず外部に対して開放された場所をもっている。それは集落調査で学んだ私なりの理論でもあった。その山本理論が徹底された住宅である。
その後、石井夫妻からこの住宅を譲り受けた藤井夫妻はこの大空間をリビングルームとして使っている。「広くて天井高が高くてとても気持ちいいですよ。ちょっと冬は寒いけど。外から見えることにはなんの抵抗もありません」と。「スタジオ・ステップス」という名前はそのまま受け継がれて、藤井プロデュースによる定期コンサートが今も続いている。今年はモンゴルの馬頭琴と日本の民謡の対決だった。
どんな住宅でも、住宅とは本来、こうして外側に対する積極的な配慮があって成り立っているものなのだ。これはいわば住宅の原型である。